向精神薬とは、中枢神経に作用し精神機能に影響を及ぼす薬物の総称で、抗うつ薬（主にうつ病の治療薬）、抗精神病薬（主に統合失調症の治療薬）、抗不安薬（主に神経症の治療薬）、睡眠薬（主に不眠症の治療薬）などがあります。
こんにちは、ガネ子です。
うつ病などのメンタル疾患、不眠症の人にとっては必要な薬なのに、睡眠薬で自死というニュースが流れてくると私は、なんとも言えない複雑な気持ちになります。
睡眠薬なんて飲んでるの？
やめた方がいいよ。
メンタルの薬？
麻薬でしょ。
薬なんて飲みたくないよ。精神薬なんてなおさら。以前のように睡眠薬なしで眠りたいよ。
それでも腹をくくって飲んでいるのに安易に私が正しくて、あなた間違っているよみたいに、反論できないまっとうなこと言うのやめて。
私のうつ病が難治化した原因の一つが、薬を必要以上に怖がったから。
もしかしたら、あなたの思いやりの一言が、誰かのメンタル疾患を難治化、遷延化させるかもしれません。
とある睡眠薬を致死量飲もうとしたら、いったいどれだけ用意しないといけないのか？
万とか数千単位が必要です。仮に5000錠としますね。(それでも致死量に至るかは不明。年齢、性別、体重、耐性が違うから)
ひと月に病院で処方される睡眠薬が二種類あるとします。決してやってはいけないけど、一種類は服用して一種類をためるとします。ひと月30錠。167ヶ月でやっと5010錠たまります。167ヶ月っておよそ14年。
14年前の悩みって、覚えていますか？この世とさよならしたいくらい辛い悩みだったとしても、今も同じくらい辛いですか？
私は14年前はうつ病が難治化して生きているのがほんとにしんどい時でした。テレビを観ることもできなくて、体はいつも鉛のように重くて、だるくて。でも今はドラマも楽しめるし、ゲームもできる。より健康で長生きしたくてジムに通ったり、朝散歩したり。うつもほぼ寛解して、生きていて良かったと心から思いながら生きています。
もしも今、とてもとても辛いことがあったとして貯錠？をはじめたとしても、今から14年先は、わざわざ5000錠ためるまでもなく、アラフィフのガネ子には寿命が来てるかもしれません。
今、5,000錠の睡眠薬がある？ならそれを飲むために必要な水の量って考えたことある？
私はだいぶ薬を飲むのに慣れてるから、がんばったら7錠くらいなら一度に飲めるかもしれません。(慣れてない時は1錠ずつがやっと。大きな錠剤は半分に割って飲んでいました)その時に必要な水の量を50ccとして、715回ごっくんを繰り返すと約35000cc。牛乳1リットルが1000ccなので、牛乳35本分の水が必要です。
水25ccで薬7錠を飲んでみせるという人でも、牛乳17本、飲めますか？
大腸検査で飲む下剤、2ﾘｯﾄﾙ。あれでも全部はキツイよね。
だからね、致死量確実に飲めるなんて考えないでください。途中で寝ちゃったり、吐いちゃったりもするから。
私は産後にうつ病になり、薬の副作用や再発で、三度の入院体験があります。最初の入院の時、一緒の病室でお話しするようになったとても穏和で優しい女性がいました。
彼女は第一子出産後のうつで不眠が酷く、たくさんの睡眠薬を処方されていました。十数年前は今みたいに睡眠薬は3種類までなんていう決まりもなかったので、不眠を訴えるたびになにやら薬が増えていく良くない状態に陥っていました。
その女性との二度目のご対面が、まさかのお互い入院2回目。彼女は睡眠薬をオーバードーズして救急搬送されてきたのです。
もちろん彼女は自死するために薬をためていたわけではなく、ある日の夕方、幼い息子さんに一緒に住んでいる義母さんが優しく童謡を歌っているのを聴いると、せつなくて、たまらなくなって、気づいたら、6、7錠が一包化された睡眠薬を開けては一ヶ月分をばらばらと飲んでいったらしいです。
たまらなくなってって、すごくよく分かる。
辛かったよね。でも、病院に運ばれてきてからの彼女はもっと辛かった。胃洗浄で溺れ死ぬ苦しみを味わい、気管に薬が入ったのか詳しくは分からないですが、40度近くの高熱がずっと続き、オムツと尿道カテーテルをつけて、トイレにも行けず、お風呂にも入れず、苦痛な数日を過ごし、ようやく私と話せるようになった時、力無く、でも心から、もうオーバードーズはしないよと言っていました。彼女に障害が残らなくて良かった。
うつ病だけだったら、10年後には旅行に行ったり、趣味を楽しんだりするくらいには回復していたのに、オーバードーズで深刻な一生の障害が残ってしまうこともあるから。
歌舞伎俳優の一家の
ニュースで、感じた違和感。
飲んだ薬がなんなのかわからないこと。
薬のシートも残りの錠剤も何も残っていなかったこと。
一般人では手に入らない何かを手に入れられたと考える方が私はしっくりきます。
詳しい事を当事者でもない外野の私たちが知る必要もすべもなく、外野の私たちだからこそ、無責任に数日後にはこのニュースのことも忘れてしまうのでしょう。
私たちは忘れてしまっていい。でも安易に向精神薬を悪者にして悪いイメージだけを残して、心に刻まないで欲しい。
向精神薬だけじゃない。どんな薬でも用法用量を守らずに飲んだら危ないのです。アルコールだって同じ。一般の医薬品だってそう。
このニュースをみて、処方された睡眠薬1ヶ月分くらいまとめて飲んだらツラいこの世とサヨナラできるなんて考える人がいるかもしれない。
でも、それって間違っているって少しでも分かってもらえたでしょうか。
将来を悲観するなら、未来のことは考えず、自分の身体に、今動いている心臓にありがとうと、感謝をしてみませんか？
10年後に今を後悔しないためにも。
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